テーパリングとは
テーパリング(Tapering)とは
英語の「taper」は「先が細くなる」「徐々に減らしていく」という意味です。
トレーニングによって蓄積したダメージを修復し、筋肉の衝撃吸収機能を回復させたり、さらにはランニングの経済性、および筋力を向上させることで疲労の抜けたシャープな状態を作り上げるということ。
有酸素能力を維持しつつ(ジョグ)、シャープな練習をほどよく調合して本番まで、体力を回復、温存する。
このようにして、コンディションのピークを大会当日に合わせるという意味で「ピーキング」とも言われます。
テーパリングの効果
多数の研究データから、最大で16%、おおむね2〜4%のパフォーマンスの向上がみられたと報告されています。
3時間前後で走るランナーであれば3分30秒〜7分、サブ4を目指すランナーであれば4分50秒〜9分40秒ほどのタイムの短縮につながります。
手の届きそうな記録に目標を設定している人であれば、テーパリングの潜在的な効果はとても大きいと言えるでしょう。
マラソン・テーパリングの基本
- レース3週間前から始める
- トレーニング強度は維持する
- トレーニングの距離は減らす
- 回復日の練習は軽くするか、完全休養とする
- 適切な食事と水分補給を行い、できるだけ回復を図る
- 筋肉に張りがあれば、ストレッチ、理学療法、マッサージ、休養によって取り除く
レースパフォーマンスとテーパリング期間との関係を調査した研究は多数あり、その結果、最低2週間が必要で、3週間あれば理想だというのが共通の認識である。
テーパリングの期間が短すぎるとレースの日まで疲労が残り、逆に長すぎると体力が落ちてしまう。
テーパリングをうまく計画して行右ことができれば、走力も高められ、かつ疲労も抜けたベストな状態でレースに臨むことができます。
トレーニングの減らし方
基本的概念は、トレーニングの強度を維持しながら距離を大幅に減らすことである
- レース3週間前:走行距離を20〜25%減らす
- レース2週間前:走行距離を40%減らす
- レース1週間前(レース前6日間):走行距離を60%減らす
例えば月間走行距離が200km、週間走行距離は約50kmとすると
- 3週間前:40km〜35km 1週間のうち5回走るとすると、1回約7〜8km
- 2週間前:30km 1週間のうち5回走るとすると、1回約6km
- 1週間前:20km 1週間のうち5回走るとすると、1回約4km
これは現在のトレーニング量、過去の経験、健康状態によって異なるので、ベースとして捉えておくような意識が良いでしょう。
気をつけることは、ムダに走らないこと、強度をあげないこと、普段やっていないようなことをすることです。
注意すべきポイント
レース前のテーパリングの時期に入りますと、それまで追い込んでいた練習量を落として行くことになります。
しかし、それに伴いこれまでたくさん練習をしてきた人にとっては、練習量の少なさや、不安からついつい「あと1本」または「あと少し」といったように練習量を増やしてしまう。
ここまできて最も大きな落とし穴は、高ぶる気持ちから、あるいは「本当に思ったように走れるのだろうか?」という不安から「試してみたい」という気持ちを抑えられなくなることです。
練習量が減ることで、普段行っている練習の強度を上げたり、「もう1本行けそうだな」と思いつい走ってしまう。
トレーニングを常にコントロールすることを忘れないように。
マラソンランナーの大会当日までの練習は「芸術品を作り上げることと似ている」とも言われます。
3ヶ月、半年、または年単位で彫刻を彫ってきて最後の3週間ほどで仕上げにかかります。
この時に不安や迷いから、必要以上に削って(走って)しまったり、つい余計な(もう1本)ことをしてしまったりして、それまで積み上げてきてしまったことを台無しにしてしまう恐れがあります。
芸術の総仕上げ、慎重に丁寧に自分自身を磨き上げていく作業、それがこのテーパリングの時期です。
最後はこれまで自分自身が行ってきた練習を信じ、自分自身の身体や心の状態を観察しながら、あらゆる感情やノイズをかき消して、自身を研ぎ澄ませて行くことに集中しましょう。
レースでよい結果を出すためには、「フレッシュ」で「シャープ」出なければなりません。
ハードなトレーニングをやり続けながらレースでよい結果を出すことはできません。
まとめ
目標が高いランナーになればなるほど、このテーパリングはレースに向けて1番ナーバスになる時期です。
走る練習はたくさん積むことができますが、テーパリングの練習をすることは難しく、多数ある研究結果が自分に当てはまるかどうか、その時の自分の肉体的なあるいは精神的な状態などから、テーパリングの内容が変わってくるはずだからです。
そしてそれを確認できるのが本番のレースとなると、必然的に不安がつきまとうものです。
その不安を緩和してくれるものが、過去の経験だったり、メンタルタフネスといったことになります。
ですので、ベースのない(初級者〜中級者)方は、上記のような研究結果から分析されているメニューを参考にしてテーパリングを行うとよいでしょう。
マラソンは我慢だけのスポーツではなく、あらゆることを「コントロール」するスポーツとも言われます。
これが難しいことではありますが、難しいことをできるように、冷静にテーパリングをしていきましょう!!
あまり走らずにじっとしているより、走っていた方が気分が楽という方もいらっしゃると思いますが、たかぶる気持ちもグッとこらえて、走り出したくなる気分を大会当日のラスト10kmまで我慢しましょう!
目指すところはレース当日スタートラインの42.195km先。
その瞬間まで如何に最高の状態を作れるかということ。
追記
上記のテーパリング方法は、練習を積み重ねてきたという方の基本情報になります。
あまり練習をしてこられなかった方は、上記の方法にとらわれず、どうすれば自身が『最高の状態』で大会当日を迎えられるのかを考えた練習を重ねるとよいでしょう。
練習ができなことに対して焦ってしまい、前日まできつい練習をこなして大会に臨むといったことは避けることをお勧めします。42kmの道のりは長いです。
体調は疲労のない状態に整えておきましょう。
少なくとも1週間前までで見切りをつけて、後は少しでも疲労を抜いて大会当日を迎えるられるとよいですね。
最後まで練習を重ねることで自分のベストの状態が保てるという方は、それがベストだと思います。
最終的に「自分のベストの状態を作る」ことを目的とするとよいです。
参考文献
・ベースボールマガジン社/アドバンスト・マラソン・トレーニング