マラソンで目標を達成させるためにはトレーニング内容を計画的に構築する必要があります。
私たち市民ランナーでも、自身の目標のタイムに向かって努力をしている方も数多くいると思います。
しかし、トレーニングの方法をあまり知らず、年間を通して同じようなトレーニングを続けてしまっている人も少なくないのではないでしょうか。
実際、私はその一人でした。。
それでも結果がついてくるという方もいると思いますが、トップアスリートたちは自分自身の力を最大限に発揮させるために、トレーニングを内容を期ごとに分け、狙った大会で最大限のパフォーマンスを発揮できるように構築しているようです。
そこで、今回はそのトレーニングの『期分け(計画)』についてご説明していきます。
計画を立てる(期分けする)
計画にはざっくりと長期(半年〜年)、中期(月〜半年)、短期(週〜月)などに分類ができます。
マラソンのシーズンは、おおむね10月の中旬から4月の中旬の6ヶ月間と言えるでしょう。
その期間中ずっと良い状態をキープするのは容易ではありません。
そこで今回は、1本のレースに対しての22〜25週間のトレーニング内容を各フェーズ毎に説明してきます。
これを大枠とし、レースに向けての期分け(計画)を立てていきます。
サイクル | 主な目的 | 期間 |
フェーズI | 走行量の多い、基礎トレーニング期 | 7~8週間 |
フェーズⅡ | LTを高める | 4週間 |
フェーズⅢ | レースの準備 | 4週間 |
フェーズⅣ | テーパリング、レース | 3週間 |
フェーズⅤ | 回復 | 4~6週間 |
フェーズⅠ 走行量の多い基礎トレーニング期
この時期は、やや長め期間を必要とし、トレーニング量を増やし基礎となる脚作りと持久力を高めることに注力しましょう。
注意することは、故障のリスクを最小限に抑えながら走行距離を増やすこと。
走行距離を増やすことだけが目的になってしまい、一気に距離を伸ばしてしまうと、疲労が蓄積または抜けきらなくなり、故障の原因に繋がります。
推奨されている目安としては、週間、または月間走行距離の10〜15%とされています。そして、走行距離を伸ばした際、2〜3週間は同じ距離を保ち、さらに距離伸ばすのはその後にしましょう。
インターバルなどの強度の高い練習を組み込むことはせず、やや強度を落とし身体への負担を高めずにトレーニング量を増やしましょう。
1度のロング走の距離は週間走行距離の30%ほどまでで抑えることもリスクの軽減につながります。
このフェーズでは、故障に気をつけながら、ランニングの基礎となる強靭な脚作りを目指しましょう!
基礎がないと大きい成長は望めませんよね。大きな花を咲かせるために下へ下へと根を伸ばす時期です。
フェーズⅡ LT値の向上を目的とする。
LT(Lactate Threshold)「乳酸性作業閾値」とは、筋肉内および血中の乳酸濃度を高めることなく、有酸素性エネルギー産生を素早く行うことができる運動強度の値。
これより上の値では乳酸の生成が消費よりも大幅に上回り、乳酸濃度が筋肉内および血中で上昇してしまうため、フルマラソンでは持続することができずオーバーペースとなってしまう。
ちょっと難しくて分かりづらいので、簡単に訳しますと、ペースが速過ぎると身体に乳酸が溜まって動かなくなってしまいます。400m走などを全力で走った際に最後に脚が動かなくなるのが乳酸が溜まってしまった状態です。
逆に、遅いペースでのランニングでは乳酸は溜まりませんが心拍数を上げることができず、強化ができません。
ちょうどそのギリギリの閾値のことを言います。
LT走のペースは、最大心拍数の82〜91%ほどで少なくとも20分以上走るペース走(テンポ走)である。
82〜91%というのは15km〜ハーフマラソンの距離のレースとほぼ一致します。
最大心拍数の簡易計算式はこちら「207ー年齢×0.7」で表すことができます。全ての人にお当てはまるわけではありませんが、一般的な目安にはなるでしょう。
例えば40歳ですと「207−28(40×0.7)=最大心拍数179、×82〜91%=146.7〜162.8となります。
ですのでLT走は心拍数が147〜163の辺りで走ると良いということになります。
フェーズⅢ レースに向けた練習、および調整レース
レースペースでの練習やインターバルトレーニング(VO2max練習)、実際のレースを組み込みレースを意識した練習を組み入れていく期間。
インターバルトレーニング(Iトレーニング)。
ランニングを続けている方の中には「Iトレーニング=ハードな練習」とイメージする方も少なくないでしょう。ハードなトレーニングの代名詞と言っても過言ではないようなトレーニングの種類の一つと言えますよね。
しかし、このIトレーニングでは追い込み過ぎないように注意しましょう。
とにかく「限界まで追い込めば強くなる。」という発想をなくすこと。
マラソンというのは消費するエネルギーの99%以上が有酸素系によって供給されるため、乳酸が溜まってしまうような速過ぎるペースや肉体的にも精神的にも負担を多くしてしまう過度なIトレーニングは、頻度をあまり多くせずに行うことがマラソン練習にとっては良いとされる。
マラソンランナーにとっての効果的なペースは5kmのレースペース。これを守り通すことによって最大の効果が得られる。
調整レース
ここまでたくさんのトレーニングをこなしてきたと思うが、最後の仕上げに必要なのが調整レースである。レースの感はレースで得ることが一番効果的である。
自分の状態を確認する重要な基準にもなり、レースに対しての気持ちの準備にもなる。
他にもレースに対しての不安を取り除くことができ、自信もつき、本番さながらの準備をしてレースに臨むことで、忘れ物や準備する物、ユニフォームなどの最終チェックにも繋がる。
フェーズⅣ テーパリング、レース
3週間のテーパリング(調整)を行い、レースを走る。
テーパリングはの目的は、長期間のトレーニングにより蓄積した疲労やダメージを回復させることである。
身体の回復のみならず、精神面の集中や、脳のリラックスも同時に行うことを目的としている。
テーパリングに関する50以上の研究の結果、テーパリングは間違いなく有効であると結論づけられていて、実際ランナーに関しては2〜4%の向上を報告した研究がほとんどである。
しっかり練習を積み重ねてきた人は非常にナーバスになる時期です。できるだけポジティブな発想を心がけ良質なエネルギーに変えていきましょう!
目標を達成している自分自身のゴールしている姿を思い描くことが大切です。
テーパリングに感しての詳細はこちらをご覧ください→【テーパリング・ピーキング】
【レース前日〜当日の過ごし方】←興味のある方はこちらもご覧ください。
フェーズⅤ 回復を図る
計画的休養を意識する。
ランナーの多くには様々な理由から、休養を避けたがる傾向を持つ人が少なくない。
しかし、世界のトップランナーをはじめ、多くの書籍からも休養の大切さ、考え方、効果など、様々なポジティブな内容の話を受け取ることができる。
そのため、将来的な向上や継続という点では休養が有益であることを知っておく必要がある。
ランナーの多くには目標のレースに向けて、非常にハードなトレーニングを組み込んでいる。本当にすごいと思わされる質や量をこなし、テーパリングを行いレースに出る。
そこで目標を達成できた方は、気持ちよく休養に入ることができるかもしれないが、目標が達成できなかった方の多くには、練習が足りなかったなどのネガティブな思考を持ってしまい、そこからまた更に練習を続けてしまう人もいる。
こうなってしまうと、故障のリスクも高まり、心身ともに疲労が抜けず、バーンアウト(走ることを辞めてしまう)してしまったり、質の高い練習ができず伸び悩んでしまったり、心理的にも逆効果となりかねない。
こう言ったことを防ぐことからも、目標のレースの後は計画的な休養を取り入れることが必須である。
休養中に心身ともにリラックスを図り、一度リセットをし、また新たな熱意を持って次のスッテップに向かうことの方が、より良い成果をあげられる可能性も高くなる。
休養という名のトレーニングをしていると意識をし、次のレースやトレーニング内容を考える時間に当てても良いし、ランニング以外のことで、心身ともにリフレッシュさせることでランニングに対する意欲を上げたりと、積極的なトレーニングだということを意識して、大切に時間を過ごすようにしましょう。
休養の期間は「レースの距離×1.6km(1マイル)」と言われることが多い。
まとめ
一般市民ランナーの中でも過去に指導を受けたことがない人はこのようなトレーニングの内容や期分けということを知らない人が多いのではないでしょうか。
このように期分けをすることでトレーニングにメリハリがつき、何のために今このトレーニングをしているのかが明確になり、そのトレーニング効果が高まる。
もちろん、この「期分け」が万人に効果があるとは言い切れないが、年間トレーニングの軸として参考にするのには良いだろう。
これを軸に自分に必要なトレーニングをつきとめ、距離に対するトレーニング期間を長くもうけたり、スピード強化に特化したりとアレンジすることをお勧めしたい。
次のレースまで期間があまりないという方は、上記の期間を短縮したり、フェーズ途中の自分の現在地を確認し、複合的に練習に取り入れていくと良いでしょう。
フェーズ毎の移行期間もスパッと内容を切り替えるのではなく、徐々に内容に変化を与え、スムーズに身体が対応できるようにしていきましょう。
日々の練習の目的意識を明確にしながら、いい練習を積み重ねていくことが、いい結果を生み出せる一番の近道かもしれません。
コツコツと地道な努力を積み重ねていく競技です。同じコツコツをより効率的に、効果的に積み重ねていきましょう!
ゴール後の自身の笑顔を想像しながら。。。
参考文献
アドバンスト・マラソントレーニング/ベースボールマガジン社
ダニエルズのランニング・フォーミュラ/ベースボールマガジン社